COMMON CROP / EGGPLANT

なす

正倉院文書に名が残る、千二百年以上作られてきた夏の実

01 / ARRIVAL

日本へ入ってきた時期と経路

年代の確からしさは、遺跡の出土によるものと、文献に記されたものとで違います。どちらの根拠なのかを区別して記録します。

時期
奈良時代正倉院文書の天平勝宝2年(750年)の「茄子」が最古とされる記録。
根拠の種類
文献
経路
インドを原産地とし、中国を経て日本へ渡来したと推定される。

日本最古とされる記録は正倉院文書にある天平勝宝2年(750年)の「茄子」の記述で、1000年以上の栽培の歴史をもつと記される。農畜産業振興機構の解説では、8世紀の奈良時代にはすでに栽培されていたとする。奈良時代以前の渡来時期については研究者によって主張が異なる、と国立国会図書館のレファレンス事例に注記されている。

  • 正倉院文書天平勝宝2年(750年)の記録に「茄子」が見え、日本最古のナスの記録とされる。

02 / LINEAGE

品種の系譜

長い栽培史のなかで、果形の違う在来品種が地域ごとに分かれて残った。丸なすは秋田・山形・新潟・福島と京都に、長なすは東北や中四国・九州に分布する。近代以降は真黒なすのような固定種が主力となり、1960年代に一代雑種(F1)の長卵形品種が登場して全国的な標準となった。

系統どうしのつながりは、公開情報から確認できていません。ここでは並列に記録します。

  1. 近世〜

    在来の丸なす(賀茂なす・民田なす・窪田なすなど)

    在来

    丸ナスは秋田県・山形県・新潟県・福島県と京都府に分布したと記される。京都の賀茂なす、山形の民田なす・窪田なすが代表例。

    近世〜

  2. 近世〜

    在来の長なす(津田長・博多長など)

    在来

    長ナスは東北や中四国、九州で栽培されていたと記される。島根の津田長、福岡の博多長が代表例。

    近世〜

  3. 近代

    真黒なす

    在来

    一代雑種が普及する以前の主力品種として言及される固定種。タキイ種苗の記事では「千両」登場前の時代の主力品種と位置づけられている。

    近代

  4. 1964

    千両二号

    交配育成

    一代雑種(F1)として育成された長卵形品種。早生・多収、萎凋病への耐病性、高温乾燥への強さ、荷詰めしやすい形、夏季にも色あせしにくい黒紫色などが育成の狙いとされる。夏秋なすの代表品種として長く使われている。

    1964年(昭和39年)育成

03 / NOTES

覚え書き

統計上の定義や用途の区分など、数字を読むときに前提になる事柄を残します。

在来品種の果形は東西で分かれる

丸なすは秋田・山形・新潟・福島の北日本と京都府に、長なすは東北・中四国・九州にという分布が記録されている。同じ「なす」の産地統計でも、地域によって想定される果形と用途(漬物・田楽・煮物)が違う点は読み替えが必要になる。

栽培が容易な中長なすが広がった

農畜産業振興機構の解説は、栽培が容易で色がよい中長なすが広く栽培されている、と記す。地域在来の丸なす・長なすが縮小し、流通に適した長卵形が全国標準になった流れは、1964年の一代雑種「千両二号」の育成と重なる。

04 / EXPLORE

つづきを、たどる。

この作物の収穫量の推移は統計の索引に、土地に根ざした品種は在来の台帳にあります。