COMMON CROP / RICE

縄文の終わりに北部九州へ渡り、明治の在来選抜から国の育種へ連なる

01 / ARRIVAL

日本へ入ってきた時期と経路

年代の確からしさは、遺跡の出土によるものと、文献に記されたものとで違います。どちらの根拠なのかを区別して記録します。

時期
縄文時代晩期弥生時代の開始を紀元前10世紀頃とする説を含め、年代には諸説がある。
根拠の種類
考古
経路
大陸から北部九州へ水田稲作の技術が伝わり、弥生時代に西日本から東日本へ広がったとされる。

水田稲作は縄文時代の終わり頃に北部九州へ伝わったと考えられている。佐賀県の菜畑遺跡や福岡県の板付遺跡で縄文晩期の水田跡が確認され、水田稲作の開始が従来考えられていた時期より200〜400年ほどさかのぼると理解されるようになった。開始年代には幅があり、国立歴史民俗博物館はAMS法による炭素14年代測定から弥生時代の開始を紀元前1000年頃、前期初頭を紀元前800年頃、前期と中期の境を紀元前400年頃と推定した。ただしこの年代観に対しては鉄器・銅器などの考古学的証拠から異論も出されており、決着していない。

  • 菜畑遺跡(佐賀県唐津市)およそ2700年前とされ、炭化米、土器に付着したモミの圧痕、水田跡、石包丁、石斧などが出ている。
  • 板付遺跡(福岡県福岡市)炭化米、土器のモミ圧痕、水田跡や用水路、石器が出ており、長く日本最古級の水田遺跡とされてきた。

02 / LINEAGE

品種の系譜

明治期には各地の篤農家が田の中から優れた株を見つけ出す選抜によって在来品種を生み、亀の尾・神力・愛国などが広まった。大正期以降は国と道府県の試験場が人工交配による育種を進め、亀の尾を親とする陸羽132号、その子の農林1号が生まれた。戦中に交配され戦後に育成されたコシヒカリ(水稲農林100号)以降は、その血を引く品種が全国の作付けを占めるようになった。交配組合せは農研機構のイネ品種データベースの記載に合わせ、「/」の左を母、右を父として記す。

  1. 1877

    神力

    選抜

    兵庫県揖保郡(現在のたつの市御津町中島)の丸尾重次郎が、自分の田の在来品種「程良」の中に芒のない穂を見出したのが始まりと記される。イネ品種データベースにも「程吉(選抜)」から出た品種として登録されている。愛国・亀の尾と並び、大正から昭和にかけての水稲三大品種に数えられたとされる。

    1877年(明治10年)育成と記される

  2. 1893

    亀の尾

    選抜

    山形県余目町(現在の庄内町)の阿部亀治が、冷害の年に実っていた穂を見出し、翌年から自分の田で選抜したと記される。イネ品種データベースには「惣兵衛早生」から出た品種として登録されている。陸羽132号・水稲農林1号・コシヒカリへ連なる系譜の起点のひとつとされる。

    1893年(明治26年)選抜開始 / 1897年 世に出る

    この先 陸羽132号 へ合流する

  3. 明治期

    愛国

    選抜

    明治期に広まった在来品種のひとつで、イネ品種データベースには「身上起(選抜)」から出た品種として登録されている。誰がどこで育成したかは定説がなく、宮城県南部の館矢間村とする説と船岡村とする説が並ぶ。ここから純系淘汰によって陸羽20号が育成されたとされる。

    明治期

  4. 1915

    陸羽20号

    選抜

    愛国

    農事試験場陸羽支場(秋田県花館村、現在の大仙市)で育成されたと記される、いもち病に強いとされる品種。イネ品種データベースには「愛国(純系淘汰)」から出た品種として登録され、命名年は1915年、配付開始も同年と記録されている。

    1915年(大正4年)命名

  5. 1921

    陸羽132号

    交配育成

    陸羽20号 × 亀の尾

    農事試験場陸羽支場(秋田県花館村、現在の大仙市)で育成されたと記される。交配組合せは「陸羽20号/亀の尾4号」で、亀の尾4号は亀の尾から選ばれた系統にあたる。耐冷性をもち、ササニシキやコシヒカリなど多くの品種がこの系譜を引くとされる。

    1921年(大正10年)育成と記される

  6. 1931

    水稲農林1号

    交配育成

    陸羽132号

    新潟県農事試験場で並河成資らが育成したとされる。イネ品種データベースには地方系統名の「北陸4号」で登録され、交配組合せは「森多早生/陸羽132号」、つまり種子親が森多早生、花粉親が陸羽132号と記録されている。寒冷地向けの早生・多収品種で、コシヒカリの父にあたる。

    1931年(昭和6年)育成とされる

  7. 1943

    水稲農林22号

    交配育成

    兵庫県農事試験場で育成されたと記される、コシヒカリの母にあたる品種。イネ品種データベースには地方系統名の「近畿34号」で登録され、交配組合せは「近畿15号(農林8号)/近畿9号(農林6号)」と記録されている。

    1943年(昭和18年)育成

  8. 1956

    コシヒカリ

    交配育成

    水稲農林22号 × 水稲農林1号

    農研機構のイネ品種データベースでは交配組合せが「農林22号/農林1号」、地方番号が「越南17号」と記録されている。1944年に新潟県で交配され、福井県の農業試験場で選抜が進められたと伝わる。

    1956年 農林登録(水稲農林100号)

  9. 1991

    ひとめぼれ

    交配育成

    コシヒカリ

    宮城県古川農業試験場で育成された、系統名「東北143号」の品種。交配組合せは「コシヒカリ/初星」で、コシヒカリの食味を受け継ぎつつ耐冷性を高めた品種として広まった。

    1991年(平成3年)育成とされる

03 / NOTES

覚え書き

統計上の定義や用途の区分など、数字を読むときに前提になる事柄を残します。

水稲と陸稲は分けて数える

国の統計では、水田で作る水稲と畑で作る陸稲(おかぼ)を分けて集計し、合わせて「水陸稲」として公表する。陸稲の作付面積は水稲に比べて桁違いに小さいため、作付面積や収穫量を読むときはどちらの数字かを確かめる必要がある。

主食用米は引き算で出す

「主食用作付面積」は独立に測るのではなく、水稲の作付面積から備蓄米・加工用米・新規需要米等の作付面積を差し引いて求める。加工用米や新規需要米(飼料用米、米粉用米、WCS用稲など)の統計は作物統計ではなく取組計画の認定状況から集計されるため、出所の異なる数字を突き合わせている点に注意がいる。

品種名は三通りある

育成中の系統には育成地ごとの地方番号が付き(コシヒカリなら越南17号)、国の農林登録を経ると「水稲農林○号」の番号が与えられ、そのうえで流通名が付く。同じ品種が資料によって別の名前で現れるため、系譜をたどるときはこの対応関係を先に押さえる。

04 / VARIETIES

品種から、さかのぼる

有名な品種を選ぶと、その品種がどの掛け合わせで生まれたかを親の代へさかのぼれます。多くは同じ祖先に行き当たります。

05 / EXPLORE

つづきを、たどる。

この作物の収穫量の推移は統計の索引に、土地に根ざした品種は在来の台帳にあります。