PEOPLE OF THE PASTURE / FIRST NOTES

育てる人と、その土地の循環。

牛を飼い、乳を搾り、卵を採り、肉に仕立てる。畜産の仕事は餌の田畑と堆肥の行き先までつながっています。担い手の仕事を原典からたどります。

RECORDS12

仕事と所在地を公的資料で確認した初期記録

ROLES7

畜種と工程で分けた担い手の役割

REGIONS11

仕事の土地まで接続できた都道府県

01 / PEOPLE

牧場と食卓のあいだをつなぐ。

「畜産農家」を一括りにせず、酪農、肉用牛、養豚、採卵鶏、肉用鶏、加工のどこを担うのかを分けて記録します。

北海道

酪農

冨田泰雄
無化学肥料の牧草づくり土壌・飼料分析の蓄積スラリーによる有機物循環チーズ加工

オホーツク海沿岸の興部町で乳牛192頭を飼い、年間約790tの生乳を出す牧場。牧草には25年以上化学肥料を使わず、ふん尿と石灰の施用だけで慣行と同程度の収量を得る栽培を確立しました。その粗飼料に支えられたチーズは国内外で受賞し、直売店やファームインへつながります。令和7年度農林水産祭で日本農林漁業振興会会長賞を受けた経営です。

京都府

酪農

ロボット搾乳とパーラー搾乳の併用稲WCSによる耕畜連携ふん尿の有機堆肥化朝しぼりのチーズ加工

戦後開拓で入植した祖父の代から続く京丹波の牧場。平成17年に京都府内で初めてロボット搾乳牛舎を建て、いまは飼養頭数150頭規模をロボットとパーラーの併用で見ています。ふん尿は法人で有機堆肥にして町内の耕種農家と稲WCSを回し、隣接する工房では朝しぼった乳をその日のうちにチーズへ仕立てます。令和7年度全国優良畜産経営管理技術発表会の最優秀賞事例です。

佐賀県

乳製品・チーズ

中島大貴
堆肥づくりから搾乳・製造まで自社で行うホエイの商品化飼料稲・二条麦の栽培カフェの運営

嬉野市塩田町の酪農家。堆肥を作り土を耕して牧草を育てるところから、牛を飼い、搾りたての乳をチーズにするまでを自分たちで手がけます。日本で初めて製品化したブラウンチーズはワールドチーズアワードで銅賞を受け、チーズ製造で出るホエイも独学で乳製品に変えました。令和7年度農林水産祭・多角化経営部門で日本農林漁業振興会会長賞を受けた経営です。

鹿児島県

肉用牛・一貫

窪田敏
繁殖と肥育の一貫経営農場HACCP放牧牛肉・加工品の直接販売

昭和57年に成雌牛10頭から始まった霧島市の肉用牛経営。父と叔父と本人の経営を平成30年に統合して法人化し、成雌牛450頭規模まで広げました。増頭に伴って母牛や子牛の事故が増えたことを機に農場HACCPへ取り組み、令和4年からは放牧を、令和5年からは牛肉と加工品の販売を始めています。令和7年度全国優良畜産経営管理技術発表会の優秀賞事例です。

大分県

養豚

工藤厚憲
繁殖から肥育までの一貫経営人工授精飼料用米の給与堆肥の広域供給

昭和50年に設立され、母豚約2,900頭を飼って年間約6万頭の肥育豚を出す養豚場。飼料用米を一定割合含む餌で育てた豚を「米の恵み」として出荷し、自社のライスセンターで約40haの飼料用米を処理して地域の耕種農家とつながります。堆肥処理施設で作る良質堆肥は広域へ供給されます。令和7年度農林水産祭で内閣総理大臣賞を受けた経営です。

宮崎県

養豚

SPF豚の一貫生産口蹄疫からの経営再開預託農家の受け入れ直売所での販売

農協の共同肥育農場が続けられなくなったのを受け、平成8年に農家11戸と農協などの出資で設立された養豚会社。母豚1,200頭規模のSPF豚一貫生産を行います。平成22年の口蹄疫では15,957頭すべてを失いましたが、従業員を解雇せず同年11月に家畜を導入して再開し、経営が難しくなった農家を預託農家として受け入れました。令和7年度全国優良畜産経営管理技術発表会の優秀賞事例です。

山形県

採卵鶏

半澤清彦
自社農場での採卵飼料用米による耕畜連携半熟燻製への加工農場HACCP

昭和35年に採卵鶏約500羽と卵の販売で創業し、一度は養鶏をやめて卸に専念した会社。平成16年の鶏卵生産調整の撤廃で価格競争が起きたのを機に、付加価値の高い卵を自ら作る道へ戻り、平成18年から半熟燻製たまご「スモッち」の製造を始めました。飼養羽数は令和7年に45,000羽、飼料用米を使う耕畜連携も続きます。令和7年度全国優良畜産経営管理技術発表会の優秀賞事例です。

大分県

採卵鶏

荒牧大貴
平飼い育すうから一貫した飼育鶏ふんの堆肥化直売所・菓子工房の運営

標高600mの久住高原にある採卵養鶏。昭和39年に祖父が地域15戸と養鶏組合を起こしたのが始まりで、平成4年に生協向けの生産農場として法人になりました。平飼堆積発酵床という飼い方を早くから確立し、令和5年の事業継承の後は畜舎特例法で平飼いの鶏舎を建て増しています。養鶏場直営の菓子工房と直売所も営みます。令和7年度全国優良畜産経営管理技術発表会の優秀賞事例です。

高知県

肉用鶏

井上孝秀
飼育管理のDX化飼料の自社運搬・備蓄鶏ふん堆肥による耕畜連携肉用鶏のブランド化

足摺岬に近い大月町で肉用鶏を育てる会社。飼育に必要なデータをデジタル化して管理者全体で共有し、年間約150万羽の規模まで広げました。鶏ふんの焼却灰を堆肥に戻して地域の耕種農家へ配り、その堆肥を使った耕作放棄地のレモン栽培も手がけます。令和7年度農林水産祭で天皇杯を受けた経営です。

山口県

地鶏・銘柄鶏

養鶏専門の農業協同組合生産から加工・販売までの一貫黒柏鶏を活用した地鶏の飼養

長門市にある養鶏専門の農業協同組合。鶏の生産から加工、販売までを自ら一貫して行います。山口県が天然記念物の黒柏鶏を活用して13年かけて開発した地鶏「長州黒かしわ」の登録生産者団体で、地域由来の飼料を使う官民一体の飼養管理が地理的表示の登録簿に記されています。

福岡県

地鶏・銘柄鶏

はかた地どりの生産体制の確保ロット番号によるトレーサビリティ直営の料理店・唐揚げ店の運営

久留米市北野町の農事組合法人。福岡県の地鶏「はかた地どり」の生産体制を確保し、直営の料理専門店や唐揚げ店も営みます。はかた地どりは軍鶏とサザナミを祖父母に持ち、白色プリマスロックをかけあわせた鶏で、生産者や鶏舎、出荷日、飼育日数は商品のロット番号からたどれます。

福島県

地鶏・銘柄鶏

養鶏農家と流通事業者の組織化会津地鶏の生産流通の円滑化ブランド化

平成17年12月に、会津地方の養鶏農家と地鶏肉・鶏卵の流通事業者で組織された非営利の団体。会津地鶏の生産と流通を回し、ブランドとして立てる活動を続けます。会津地鶏は令和7年に地理的表示へ登録され、赤みの強い肉色ときめの細かい肉質、アラキドン酸を豊富に含むことが登録簿に記されています。

02 / EDITORIAL POLICY

有名人名鑑にはしない。

掲載は知名度や格付けではなく、仕事の内容、土地、扱う畜産物を原典で確認できることが基準です。出発点は農林水産祭の受賞理由概要、全国優良畜産経営管理技術発表会の事例、地理的表示の登録簿という、無料で読める公的資料に限っています。所在地は原典がより細かく書いていても市町村までとし、訪問・購入の可否は各公式サイトの案内を確認してください。

03 / EXPLORE

数字と名前からも、たどる。