GUIDE / TERMS & SYSTEMS

言葉を、そろえる。

伝統野菜、在来種、GI、地域団体商標、地鶏の銘柄とJAS認証、伝統的工芸品の指定。似ているが同じではない言葉の意味と、制度の性格の違いを、台帳を読むための前提として整理します。

01 / TRADITIONAL VEGETABLES

「伝統野菜」に、全国共通の定義はない

伝統野菜は法律用語ではありません。何年前からの栽培を「伝統」と呼ぶかは、定義する制度ごとに異なります。台帳に収録した原典確認済みの制度から、基準の幅を並べます。

01 / 鹿児島県

かごしまの伝統野菜

おおむね昭和20年以前から県内で栽培されてきた野菜。

02 / 秋田県

あきた伝統野菜

昭和30年代以前から栽培され、現在も種苗と生産物を入手できるもの。

03 / 滋賀県

近江の伝統野菜

概ね明治以前の導入歴があり、種子保存が確実な野菜。

04 / 三重県

みえの伝統野菜

50年以上前から栽培が続き、祭事・郷土食で活用されるもの。

05 / いわき市

いわき伝統野菜

自家採種や株分けで受け継がれ、市内で概ね30年以上前から栽培。

READING

だから、定義を添える

同じ「伝統野菜」でも、指す範囲は制度ごとに違う。Fudo-Kiでは必ず、その制度自身の言葉による定義と原典を添えて収録します。

02 / LANDRACE

在来種・地域品種とは

自家採種や株分けによって世代を越えて受け継がれ、その土地の気候と食文化に適応してきた系統を指します。台帳の「在来・地域品種」はこの層を記録します。

01 / SEED

種が土地にある

在来種の核心は、種苗会社ではなく集落・農家・自治体が種を持ち続けていることにあります。台帳が「種の所在」を記録するのはこのためです。

02 / BRED

育成品種と区別する

在来から選抜・交配して品種登録されたものは、由来が在来でも育成品種です。県の一覧に両者が並ぶ場合、台帳では区別して収録します。

03 / NAME

名前は呼び名から始まる

在来種の名前の多くは地区名を冠した呼び名で、複数の系統を含むことがあります。名前の一致だけで同じものとは限りません。

04 / RECORD

記録がないことは、無いことではない

公的な記録に載らないまま採種が続く作物もあります。台帳が空白でも、土地に作物が無いとは限りません。

03 / GEOGRAPHICAL INDICATION

GI(地理的表示)とは

特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(GI法・2015年施行)に基づき、産地と結び付いた品質・特性を持つ産品の名称を国が登録・保護する制度です。登録番号、生産者団体、品質基準が登録簿として公開されます。

01 / REGISTER

公的な来歴の記録

登録簿には産地の範囲と来歴が明文で残ります。制度を持たない県では、GI登録簿が在来品種の数少ない公的原典になることがあります。

02 / NOT EQUAL

GI登録 = 在来種ではない

GIは産地ブランドの保護制度であり、改良品種や栽培管理のブランドも登録されます。台帳では、登録簿に在来性が記されるものだけを在来として収録します。

03 / COVERAGE

在来種の多くは未登録

登録には生産者団体と費用・手続きが必要なため、集落単位の在来種の大半はGIの外にあります。未登録は価値の否定ではありません。

04 / SOURCE

登録簿を直接引く

台帳のGI由来の記録は、農林水産省の登録産品ページを原典として品目ごとにリンクします。

農林水産省「地理的表示(GI)保護制度 登録産品一覧」

04 / SYSTEMS

制度の性格、6つの分類

「伝統野菜」を名乗る枠組みでも、品目を認定するのか、紹介するのか、調査記録なのかで意味が異なります。台帳の索引は制度を6つの性格に分けています。

01 / 現在8

品目認定

定義と審査を持ち、品目を公式に認定する制度。認証審査会など、追加・除外の手続きを持つ。

02 / 現在12

選定・登録

県などが基準を置いて品目を選び、一覧として公表する枠組み。認証マークや生産者認定を伴うものもある。

03 / 現在6

紹介・調査

認定ではなく、行政や研究機関が品目を調べて紹介する記録。定義が明文化されていないことも多い。

04 / 現在4

地域調査

農政局などが地域別に地方野菜を記録した調査資料。制度の枠外にある在来種を拾う入口になる。

05 / 現在1

資料掲載

現行の制度ページを確認できず、過去の公的資料への掲載だけが確認できている状態。

06 / 現在16

GI登録

国が産品の名称を保護する登録。伝統野菜の選定ではないが、来歴と産地の公的記録になる。

05 / ABSENCE

制度がない県の読み方

現在20の県で、伝統野菜を対象とする統一制度を確認できていません。制度の有無と作物の有無は別の話です。制度がない県では、JA・市町村の資料、農水省の郷土料理記録、農研機構の在来品種データベース、GI登録簿が実質の原典(記録層)になります。地域ページでは「確認できていない」ことも、確認した年月とともに明示します。

06 / FISHERIES

水産の名物は、商標とGIという別の制度からたどる

各地の名産・ブランド魚介の索引は、水産物そのものを認定する統一制度ではなく、地域団体商標とGI登録という、それぞれ別の目的を持つ二つの制度を、名物であることの証拠として名寄せしたものです。

01 / TRADEMARK

地域団体商標

特許庁の一覧のうち、産品別「水産食品」全件と、加工食品などに分類されていても主体が魚介・海藻の商標を収録。現在87件。

02 / GI

GI登録水産物

農林水産省の登録簿記載事項を転記。現在22件。産地ブランドの保護制度で、水産物の品質そのものを認定する制度ではありません。

03 / MERGE

名寄せして、合算しない

同じ名称・同じ県のものは1件にまとめ、現在103件。制度別の件数をそのまま足した数にはなりません。

04 / SCOPE

統計分類とは対象が違う

登録簿・商標は養殖・内水面・加工品を含むため、海面漁業生産統計の統計分類とは対象の定義が違います。件数は比較しません。

農林水産省「地理的表示(GI)保護制度 登録産品一覧」特許庁「地域団体商標登録案件一覧リスト」

07 / LIVESTOCK

地鶏は、「名乗ること」と「認証されること」が別

地鶏という言葉には、都道府県が造成した銘柄を名乗ることと、地鶏肉の日本農林規格(JAS)の認証を受けることという、根拠になる制度が違う二つの層があります。台帳では件数を同じものとして扱いません。

01 / NAME

銘柄を名乗る

都道府県改良地鶏等は、農林水産省資料が転記している範囲で現在51件。

02 / CERTIFY

JASの認証を受ける

地鶏肉のJAS認証を受けた事業者は現在12件。銘柄を名乗ることとは別の手続きで、件数を同じものとして扱いません。

03 / SOURCE LIMIT

転載できない一次資料がある

独立行政法人家畜改良センターの「地鶏及び銘柄鶏の生産利用状況調査」は無断引用・転載を禁止しているため、農林水産省資料が転記している範囲だけを使います。

04 / PEDIGREE

血統・系統は扱わない

和牛の血統・系統の家系図は、家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律の領域のため作りません。

農林水産省畜産局畜産振興課「家畜改良増殖をめぐる情勢」令和7年4月「4.全国の都道府県改良地鶏等」農林水産省「飲食料品国内認証事業者一覧」

08 / TRADITIONAL CRAFTS

伝統的工芸品は、産地県ではなく品目が単位

経済産業大臣指定伝統的工芸品(伝産法)は、品目を主キーにした制度です。複数県にまたがって指定される品目があるため、県別に数えた合計は品目総数と一致しません。

01 / UNIT

品目が単位

現在244品目。複数県指定の5品目も、県ごとに分割せず1品目として数えます。

02 / SUM

県別合計は品目総数と一致しない

県別に数えた延べ249は、複数県指定の重複を含むため244とは一致しません。

03 / SCOPE

産地は県全域を意味しない

指定告示上の産地は市町村・組合の区域で、台帳が持つ県帰属はそれより粗い単位です。

04 / SEPARATE

制度を混ぜない

都道府県指定・重要無形文化財・地域団体商標は別制度で、件数を合算しません。県別の生産額・従事者数・企業数は公開統計になく、全国系列(推計を含む)とも混ぜません。

伝統的工芸品産業振興協会「伝統的工芸品指定品目一覧」(都道府県別・業種別・指定順)

09 / SOURCES

原典の方針

Fudo-Kiが原典として使うのは、県・市町村・JA・農政局・農林水産省・農研機構・特許庁の公開資料と、経済産業大臣が伝産法にもとづいて品目を指定する告示です。伝統的工芸品産業振興協会が公表する一覧PDFは、この告示による指定事実(名称・業種分類・産地県・指定年月日)を一覧の形で入手する経路として使うもので、協会による品目の紹介文そのものは引用していません。まとめサイトや業界団体の紹介・解説記事は、調査の当たり付けに使っても引用しません。すべての記録に確認した年月を添え、確認できていないことは確認できていないと書きます。

10 / EXPLORE

言葉から、台帳へ。

前提がそろったら、土地と名前のどちらからでもたどれます。

収録範囲と空白の記録(データの現在地)