COMMON CROP / MANDARIN

みかん

中国から来た種から長島で生まれたとされる、日本育ちの柑橘

01 / ARRIVAL

日本へ入ってきた時期と経路

年代の確からしさは、遺跡の出土によるものと、文献に記されたものとで違います。どちらの根拠なのかを区別して記録します。

時期
約500年前鹿児島県長島での偶発実生とされる。江戸時代に食べられていたのは紀州みかん。
根拠の種類
伝承
経路
中国から伝わったかんきつ類の種子が鹿児島県長島で偶発実生として実を結び、そこから広まったとされる。

農林水産省の解説は、温州みかんの原産地は鹿児島県の長島とされ、中国から伝わったかんきつ類から偶発実生として生まれたと考えられている、と記す。長島町の説明では、約500年前に中国から伝わったもので、当時黄岩県に留学していた天台宗の僧がもたらしたのではないかと伝える。「温州」という名は中国の温州府に由来するが、産地の名ではない。江戸時代に一般に食べられていたのは紀州みかん(小みかん)で、種の無い温州みかんは家名存続が重んじられた当時避けられていたと記される。明治時代になって食べやすさと玉の大きさが人気となり、生産が拡大した。

  • シーボルトの記録長島町は、シーボルトが「Nagashima(ながしま)」と記していたことを、発祥の地であることの手がかりとして挙げる。

02 / LINEAGE

品種の系譜

温州みかんは、室町時代までに日本へ伝わったとされるキシュウミカンとクネンボを親とする偶発実生と考えられている。その枝変わりから生まれた宮川早生に、アメリカ生まれのトロビタオレンジを掛け合わせた清見が1949年に交雑され、これが日本最初のタンゴールとなった。不知火・はるみ・天草・せとかなど、現在店頭に並ぶ品種の多くは清見を親か祖父母にもつ。系譜は清見という一点で強く束ねられている。

  1. 室町期まで

    キシュウミカン

    導入

    中国から伝わったとされ、小ミカンとも呼ばれる。クネンボとともに、明治時代まで日本の主要なカンキツであったと記される。

    室町時代までに伝わったとされる

    この先 温州みかん へ合流する

  2. 室町期まで

    クネンボ

    導入

    インドシナ原産で、沖縄を経て伝わったとされる。アメリカで育成されたアンコールの親であるキングも、クネンボの珠心胚実生から生まれたと愛媛県の資料には記される。

    室町時代までに伝わったとされる

  3. 年代 未確認

    温州みかん

    在来

    キシュウミカン × クネンボ

    在来品種であるため両親は長く不明で、成立した年もわかっていない。農研機構のDNA解析により2016年に「ウンシュウミカンの種子親はキシュウミカン、花粉親はクネンボである」「これらを親とする偶発実生と考えられる」と公表された。矛盾のない組合せはこの一つだけだったと記される。

  4. 1915

    宮川早生

    選抜福岡県城内村(現 柳川市)

    温州みかん

    福岡県城内村(現在の柳川市)の宮川謙吉の宅地内で、在来系温州みかんの枝変わりとして発見され、田中長三郎により命名されたと記される。愛媛県の資料は、祖父母世代が不明のため三世代の系譜図を省略している。

    1915年頃に発見、1925年に命名

  5. 年代 未確認

    トロビタオレンジ

    導入

    アメリカ生まれのオレンジで、ワシントン(ネーブル)の珠心胚実生から生まれたと愛媛県の資料には記される。育成年は確認できていない。

  6. 1940

    興津早生

    交配育成静岡県興津町 農林省園芸試験場

    宮川早生

    静岡県興津町(現在の静岡市)の農林省園芸試験場で、宮川早生の珠心胚実生から選抜されたと記される。愛媛県の資料は「宮川早生」(♀)と「カラタチ」(♂)の珠心胚実生と記す。旧系統名はカンキツ興津2号で、品種登録制度が始まる前の農林認定品種にあたる。

    1940年に交雑

    この先 天草 へ合流する

  7. 1949

    清見

    交配育成農林水産省果樹試験場

    宮川早生 × トロビタオレンジ

    交配組合せは「宮川早生×トロビタオレンジ」。農林水産省果樹試験場が育成した日本最初のタンゴールで、旧系統名はカンキツ興津21号。この図の要にあたり、不知火・はるみ・天草・せとかのいずれもこの品種を親または祖父母にもつ。

    1949年に交雑、1979年に農林認定

  8. 1954

    アンコール

    導入米国カリフォルニア大学

    アメリカのカリフォルニア大学のフロストが育成した、ミカン類キング(♀)と中国南部生まれのウィローリーフ(♂)の交雑品種。愛媛県には1974年に導入されたと記される。

    1954年に育成、1970年に日本へ伝来

  9. 1972

    不知火

    交配育成農林水産省果樹試験場

    清見

    交配組合せは「清見×中野3号ポンカン」。農林水産省果樹試験場の育成だが、外見上の弱点から品種登録は行われていない。デコポンは熊本県果実農業協同組合連合会の登録商標で、品種名は不知火である。

    1972年に交雑

  10. 1982

    天草

    交配育成農業・食品産業技術総合研究機構

    清見 × 興津早生

    交配組合せは「(清見×興津早生)-No.14×ページ」。母は中間母本と呼ばれる、優れた形質をもちながら欠点のため栽培には向かず育種に使われる系統にあたる。旧系統名はカンキツ口之津16号。

    1982年に交雑、1995年8月に品種登録

  11. 1999

    はるみ

    交配育成農林水産省果樹試験場

    清見

    交配組合せは「清見×ポンカンF-2432」。農林水産省果樹試験場の育成で、旧系統名はカンキツ興津44号。愛媛県の資料では、父のポンカンF-2432の親は不詳とされている。

    1999年11月に品種登録

  12. 2001

    せとか

    交配育成農業・食品産業技術総合研究機構

    清見 × アンコール

    交配組合せは「(清見×アンコール)-No.2×マーコット」。旧系統名は口之津19号。愛媛県の資料は母本を口之津37号と表記しており、農研機構の表記と異なる。父のマーコットは、愛媛県の系譜図では親が不詳とされている。

    2001年10月に品種登録

03 / NOTES

覚え書き

統計上の定義や用途の区分など、数字を読むときに前提になる事柄を残します。

枝変わりと珠心胚実生で増える柑橘

温州みかんの系統は交配ではなく、既存の木に現れた枝変わりの選抜で広がってきた。宮川早生はその代表例で、普通温州の枝変わりとされる。また興津早生は、カンキツ特有の珠心胚実生(受精によらず親と同じ遺伝的性質の実生ができる現象)を利用して選抜されており、交配育種とは別の増え方が品種の系譜をつくっている。

種なしが嫌われた時代があった

江戸時代は家名の存続が重んじられたため、種の無い温州みかんは避けられていたと農林水産省の解説は記す。同じ性質が、明治以降は食べやすさとして評価され、紀州みかんに代わって主流となった。作物の良し悪しは、品質そのものより時代の価値観で入れ替わることがある。

品種名より産地名で流通する

主産地は和歌山、愛媛、静岡で、三ヶ日や有田といった産地名がブランドとして扱われる。青島温州や宮川早生など品種は多いが、店頭では品種より産地と収穫期(早生など)で区別されることが多く、統計と売り場の区分が一致しない。

04 / EXPLORE

つづきを、たどる。

この作物の収穫量の推移は統計の索引に、土地に根ざした品種は在来の台帳にあります。