統計と行政上の呼称は「ばれいしょ」
農林水産省の生産統計や行政資料では、ジャガイモは「ばれいしょ(馬鈴薯)」として扱われ、サツマイモを指す「かんしょ」と対になる区分をなす。いも・でん粉の資料も「かんしょをめぐる状況」「ばれいしょをめぐる状況」と、この呼称のまま分けて公表される。
- 農林水産省「いも・でん粉に関する資料」公開情報の最終確認 2026.08.01
COMMON CROP / POTATO
ジャガタラ経由で長崎に届き、北海道開拓で寒冷地の主作物へ育った。
01 / ARRIVAL
年代の確からしさは、遺跡の出土によるものと、文献に記されたものとで違います。どちらの根拠なのかを区別して記録します。
日本いも類研究会は、じゃがいもが約400年前の慶長年間にオランダ人によって長崎に伝えられたとしている。名の由来は経由地であるインドネシアのジャガタラ(ジャカルタ)にあると伝わる。伝来後はまず飢饉対策の作物として広まり、さつまいもとは逆に寒冷地・高冷地へ普及した。明治の北海道開拓期に外国品種の導入と新品種育成が始まり、生産性が上がって全国的な栽培作物になった。
02 / LINEAGE
生食の代表とされる男爵薯とメークインは、いずれも明治から大正にかけて海外品種を導入したものである。国内での交配育成は、男爵薯を母とする馬鈴薯農林1号(1943年)から本格化した。そこから暖地向けのウンゼン・デジマ・ニシユタカへ連なる系統と、北海道の澱粉原料用エニワを起点にトヨシロ・コナフブキ・ホッカイコガネへ広がる加工用の系統に分かれる。用途が生食・加工・でん粉原料に分かれるため、品種も用途別に育成されている。
函館船渠専務取締役の川田龍吉が英国の種苗商から輸入した種いもの中から、亀田郡七飯村の成田惣次郎が分譲を受けて試作したものが広まったと記される。原品種名が不明だったため川田男爵にちなんで呼ばれるようになり、後の調査でアメリカの「Irish Cobbler」であることが確認された。アイソザイムとDNAの分析により、かつての「Early Rose」の変異体とする説は否定されている。
明治41年(1908年)に導入
この先 馬鈴薯農林1号・キタアカリ へ合流する
1900年にイギリスのサットン父子商会が世に紹介した品種で、原典には「両親は不明である」と明記されている。大正初期に米国から輸入され、府県を経て北海道へ移入されたとされるが詳細は不明。男爵薯と同じ昭和3年(1928年)に北海道の限定奨励品種となった。
大正6〜7年(1917〜1918年)頃に北海道へ移入と記される
昭和4年(1929年)に北海道農試本場(札幌市琴似)で交配された、交配組合せ「レムブケ・フルーエ・ローゼン(Lembke Frühe Rosen)/ペポー(Pepo)」の澱粉原料用品種。皮が赤く食用に向かないと反対されながら決定した経緯が記される。戦中戦後の悪条件に耐え、昭和24年(1949年)には全国9万4千ヘクタール、作付の42.4パーセントを占めた。
昭和13年(1938年)に優良品種として決定
親男爵薯
昭和12年(1937年)に北海道農事試験場本場で交配された、交配組合せ「男爵薯/Deodara」の品種。ばれいしょとして農林省に登録された第1号にあたる。休眠が短く適応性が広いため、西南暖地で春秋の二作を可能にした最初の品種と記される。昭和40年(1965年)頃には全国で5万2千ヘクタール余りが作付されていた。
昭和18年(1943年)に登録
親馬鈴薯農林1号
昭和23年(1948年)に農林省札幌農事改良実験所島松試験地で交配された、交配組合せ「農林1号/Katahdin」の品種。長崎県農業試験場愛野試験地で選抜が重ねられ、育成地に近い雲仙の地名から命名された。同じ交配から出た兄弟系統に、同年登録のタチバナがある。
昭和30年(1955年)に農林6号として登録
昭和27年(1952年)に北海道農試島松試験地で交配された、交配組合せ「島系267号/島系232号」の澱粉原料用品種。育成地のあった恵庭市にちなんで命名された。原典は「国内で育成された低糖性の加工食品用品種・系統の多くはエニワに由来しており、低糖性の遺伝資源としても重要な役割を果たしてきた」と記す。
昭和36年(1961年)に農林12号として登録
親ウンゼン
昭和37年(1962年)に北海道農業試験場で交配された、交配組合せ「北海31号/ウンゼン」の品種。長崎県の愛野馬鈴薯センターで実生が養成され、江戸時代の出島にちなんで命名された。それまでの暖地の主力タチバナより食味と外観が優れ、暖地の主力品種になったと記される。
昭和46年(1971年)に農林19号として登録
親エニワ
昭和35年(1960年)に北海道農業試験場で交配された、交配組合せ「北海19号/エニワ」の品種。油加工に好適なことが判明して食用品種として登録された、日本で最初の食品加工用を主目的とするばれいしょの品種と記される。
昭和51年(1976年)に農林21号として登録
親デジマ
昭和45年(1970年)に長崎県の愛野馬鈴薯センターで交配された、交配組合せ「デジマ/長系65号」の品種。いもの肥大が早く収量が多いことから春作のマルチ栽培で急速に広がり、暖地で最も多く栽培される品種になった。市場に出回る「新じゃが」の大部分はこの品種だと記される。
昭和53年(1978年)に農林23号として登録
親トヨシロ
昭和45年(1970年)に北海道農業試験場で交配された、交配組合せ「トヨシロ/北海51号」の品種。北海道で育成された初めての黄肉のフレンチフライ用品種であることから、地名の一部とフライ色を組み合わせて命名された。
昭和56年(1981年)に農林25号として登録
親トヨシロ
昭和46年(1971年)に北海道農試で交配された、交配組合せ「トヨシロ/WB66201-10」の澱粉原料用品種。父のWB66201-10は Solanum phureja などに由来する種間雑種系統と記される。平成14年(2002年)には男爵薯を超えて北海道の品種別作付面積で首位となった。
昭和56年(1981年)に農林26号として登録
親男爵薯
昭和50年(1975年)に北海道農業試験場で交配された、交配組合せ「男爵薯/ツニカ(Tunika)」の食用品種。エゾアカリとともに、日本で初めて育成されたジャガイモシストセンチュウ抵抗性の食用品種と記される。男爵薯より煮くずれが多いため、作付は1,800〜2,000ヘクタール強で頭打ちとなっている。
昭和62年(1987年)に命名登録
03 / NOTES
統計上の定義や用途の区分など、数字を読むときに前提になる事柄を残します。
農林水産省の生産統計や行政資料では、ジャガイモは「ばれいしょ(馬鈴薯)」として扱われ、サツマイモを指す「かんしょ」と対になる区分をなす。いも・でん粉の資料も「かんしょをめぐる状況」「ばれいしょをめぐる状況」と、この呼称のまま分けて公表される。
ばれいしょの品種は生食用・加工用(ポテトチップなど)・でん粉原料用に区分され、求められる形質が異なる。加工用では調理後の黒変の少なさが重視され、生食用では肉質や食味が重視される。
北海道の品種紹介では、品種ごとにジャガイモシストセンチュウ抵抗性の有無が特性として明記されている。キタアカリのように抵抗性をもつ品種は、線虫の発生地帯での作付けを支える役割をもつ。
04 / EXPLORE
この作物の収穫量の推移は統計の索引に、土地に根ざした品種は在来の台帳にあります。