統計に載るのは「荒茶」
作物統計調査でいう荒茶は、茶葉 (生葉) を蒸熱、揉操作、乾燥等の加工処理を行い製造したもので、仕上げ茶として再製する以前のものと定義される。つまり茶の生産量は畑の収穫物そのものではなく、一次加工を終えた段階の重量で数えられている。生葉収穫量と荒茶生産量は別の項目として公表される。
- 農林水産省「令和7年産一番茶の摘採面積、生葉収穫量及び荒茶生産量 (主産県)」公開情報の最終確認 2026.08.01
COMMON CROP / TEA
平安初期の献茶の記録から、在来実生の選抜を経て近代育種へ。
01 / ARRIVAL
年代の確からしさは、遺跡の出土によるものと、文献に記されたものとで違います。どちらの根拠なのかを区別して記録します。
『日本後紀』弘仁6年 (815年) 4月22日の条に、嵯峨天皇が琵琶湖西岸の韓 (唐) 崎へ行幸した帰途、大僧都永忠より茶を献じられたと記される。永忠 (742年-816年) は入唐して最澄らとともに帰朝し、近江の崇福寺・梵釈寺の検校をつとめた僧と伝わる。この記事が、日本で茶が用いられたことを示す文献上の早い記録として扱われている。茶樹そのものがいつ列島に持ち込まれたかは、この記録からは確定しない。
02 / LINEAGE
国費で育成された茶品種の来歴をたどると、その多くがやぶきたに行き着く。やぶきたは静岡の在来種の実生と記される品種で、直接の親としても、かなやみどりやさやまかおりを介した間接の祖先としても、系譜のほぼ全体に及んでいる。ただし育てられた場所は一つではない。宇治の在来から出たあさつゆ、埼玉県のさやまかおり、宮崎県のゆめかおり、そして枕崎と金谷の試験場と、血のつながりは一点に集まりながら、育成の場は各地に散っている。やぶきたと宇治在来種の実生あさつゆを掛け合わせたさえみどりが第二の要となり、近年の品種はここから伸びる。紅茶用のべにほまれからべにふうきへ続く流れだけが、アッサム系の別の柱として独立している。
茶品種ハンドブックの来歴表では「静岡在来種実生」とだけ記される。国費で育成された茶品種の来歴をさかのぼると、ほぼ例外なくこの品種に行き当たる。なお、杉山彦三郎が在来から選抜したという広く知られた話は、農研機構の資料には見あたらなかった。育成年の記載も確認できていない。
この先 さえみどり へ合流する
親やぶきた
来歴表の表記は「S6 ♀ / やぶきた ♂」。母のS6は静岡在来種の実生と記される。国立茶業試験場の育成。ふうしゅんとはるみどりの親にあたる。育成年の記載は確認できていない。
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親やぶきた
やぶきた(♀)の自然交雑によるもので、父は不明と記される。埼玉県の育成。なんめい・ゆめかおりの親にあたる。育成年の記載は確認できていない。
この先 ゆめかおり へ合流する
来歴表に「宇治在来種実生」と記される。さえみどりの父にあたり、ゆたかみどりの親でもある。育成年の記載は確認できていない。
この先 さえみどり へ合流する
来歴表に「宇治在来種実生」と記される。ふうしゅんの母にあたるZ1の、そのまた母。育成年の記載は確認できていない。
親たまみどり
たまみどり(♀)の自然交雑によるもので、父は不明と記される。国立茶業試験場の育成で、ふうしゅんとさえあかりの母にあたる。育成年の記載は確認できていない。
この先 ふうしゅん へ合流する
来歴表に「インドから導入した種子の実生選抜」、系譜としてはアッサム系の自然交雑と記される。紅茶用の系統として、この図では独立した柱になっている。育成年の記載は確認できていない。
親やぶきた × あさつゆ
交配組合せは「やぶきた(♀)× あさつゆ(♂)」。農研機構の枕崎で育成された。一番茶の新葉が明るい緑で美しく、色沢が鮮緑で特に優れることから冴え緑と名づけられた。せいめい・さえあかり・きよか・きらり31・はると34・暖心37の親にあたり、やぶきたに次ぐ第二の要となっている。
1969年に交配、1991年11月に品種登録(登録番号2881)
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親Z1 × かなやみどり
交配組合せは「Z1(♀)× かなやみどり(♂)」。農研機構の金谷で育成された。新春の満ち足りた香味にちなみ、多収性を活かして茶業を豊かに富ませる品種になるようにとの願いを込めて富春と名づけられた。
1965年に交配、1993年10月に品種登録(登録番号3697)
この先 せいめい へ合流する
親べにほまれ
交配組合せは「べにほまれ(♀)×枕Cd86(♂)」。父の枕Cd86はダージリンからの導入種と記される。緑茶として製茶した場合に含量が高いメチル化カテキンが、ハウスダストなどによる目や鼻の不快感を軽減すると報告されている。
1965年に交配、1995年8月に品種登録(登録番号4591)
親さやまかおり
交配組合せは「さやまかおり(♀)× 宮崎8号(♂)」。宮崎県の育成。茶の品種育成では埼玉県と宮崎県が試験地に指定され、2010年まで国費による育成が行われていたと記される。
1986年に交配、2009年2月に品種登録(登録番号17252)
親ふうしゅん × さえみどり
交配組合せは「ふうしゅん×さえみどり」。旧系統名は枕崎32号で、農研機構の枕崎(鹿児島県枕崎市)で育成された。新芽の緑色が美しく品質が優れることから、清らかなお茶という意味で清茗と名づけられた。抹茶や粉末茶の原料となるてん茶の製造に適する。
1992年に交配、2020年3月に品種登録(登録番号27874)
03 / NOTES
統計上の定義や用途の区分など、数字を読むときに前提になる事柄を残します。
作物統計調査でいう荒茶は、茶葉 (生葉) を蒸熱、揉操作、乾燥等の加工処理を行い製造したもので、仕上げ茶として再製する以前のものと定義される。つまり茶の生産量は畑の収穫物そのものではなく、一次加工を終えた段階の重量で数えられている。生葉収穫量と荒茶生産量は別の項目として公表される。
茶は一年に複数回摘み取られ、その年に最初に収穫されるものを一番茶と呼ぶ。摘採面積は、茶を栽培している面積のうち収穫を目的として茶葉の摘取りが行われた面積を指し、栽培面積とは一致しない。一番茶の調査は主産県を対象とし、令和2年産で一番茶期の生葉収穫量が多い静岡県・鹿児島県・三重県に、茶の畑作物共済事業を実施する埼玉県と京都府を加えた5県が対象と説明されている。
「べにふうき」はメチル化カテキン (EGCG3"Me) を多く含むとされ、この成分はマスト細胞の活性化を阻害しヒスタミン放出を抑制すると説明される。メチル化カテキンは成熟葉に多く、茎には含有されていないと記される。香味だけでなく成分を目的に品種と摘採部位を選ぶ育種・栽培が、近年の軸のひとつになっている。
04 / EXPLORE
この作物の収穫量の推移は統計の索引に、土地に根ざした品種は在来の台帳にあります。